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川の危険性について(Q&A)
Q1.川の危険性とは、どういうことですか?
A1.川の危険性とは、「見た目(想像)」と「実際」が大きく異なることです。川は、私たちの身近にある、最も危険な場所です。
川は想像以上に速く、複雑な流れをしており、また、想像以上に深く、冷たいです。そして、川底には、岩や流木などの障害物が隠れています。
川は、見た目はおだやかでキラキラ輝いていますが、水の中では渦、複雑な流れが生じています。見た目にだまされて川を甘く見ると重大な事故につながります。
- 川は、特に下流域では、おだやかにゆったりと流れているように見えますが、実際は、想像以上の速さで流れています。 (⇒Q3)
⇒流速を甘く見て、川の中に入ると、流れにさらわれ、重大な事故につながります。
- 川は、上流から下流に向かって流れているように見えますが、実際は、想像以上に流れは複雑で、岩や構造物の付近などでは、渦、縦回転、非常に速い流れなどが生じています。 (⇒Q2)
⇒複雑な流れを甘く見ると、渦に巻き込まれて川底に引きずり込まれたり、縦回転に巻き込まれて水中から脱出できなくなったり、速い流れで岩などに押し付けられて身動きができなくなったりし、重大な事故につながります。
- 川には流れが穏やかで深みのある場所(「淵」といいます。)があり、そういったところは安全に見えますが、実際は、想像以上に深さがあり、複雑な流れや渦が発生しています。淵の深さは10〜20mあることも決して珍しくありません。この事実は、ご存じない方も多いかもしれません。 (⇒Q2)
⇒淵を甘く見ると、渦に巻き込まれて深い川底に引きずり込まれたり、複雑な流れで岩に体が押し付けられて身動きができなくなったりし、重大な事故につながります。
- 川は、特に暑い日など、水温はぬるいように思えますが、実際は、真夏でも想像以上に冷たい水が流れています。
⇒水の冷たさを甘く見ると、水中で足がつったり、水温の低さに体力を奪われて水の中で力尽きたりし、重大な事故につながります。
Q2.川で、特に危険なポイントはありますか?
A2.岩場、瀬、淵、構造物(堰堤、橋脚)には特に注意してください。また、急な増水にも十分注意してください。
岩場
岩場とは、岩の多い場所のことです。
川岸や川の中に岩がゴツゴツと立っている場所がありますが、岩の水中部分は、水の力でえぐられてくぼんでおり、そこは流れが速くなっています。
- 岩に近づいたとき、体が水圧で岩のくぼみに押し付けられ脱出できず溺死。
など、重大な事故につながります。決して油断せず、ライフジャケット着用を徹底してください。
瀬
瀬とは、水深が浅い急流部のことです。
瀬は、流れは速いのですが、川底の石が見えるくらい浅いので、歩いて対岸まで渡ってみようと思って進みだすと、
- 川底の石が藻でぬるぬるしていて滑って転び、そのまま流されてしまい溺死。
- 足が川底の石や流木にはさまってうつぶせに倒れ、水深は浅いのに、水圧で身動きが取れず溺死。
など、重大な事故につながります。浅いからといって決して油断せず、ライフジャケット着用を徹底してください。
岐阜県内で実際にあった話(一部加工しています)
『その日、私が散歩をしていると、清流で有名な川の上流部の流れの急な浅瀬で、若い夫婦と4歳くらいの女の子が遊んでいるのが見えました。誰もライフジャケットを着用しておらず、浮き輪をつけただけの小さな女の子を、流れに任せて流して遊んでいるのです。水難事故が毎年起きている地域ですので、どうしても心配になり、思わず「おおい、そんな風に遊んでいては危ないよ」と声を掛けました。』
淵
淵とは、河川の流水が緩やかで深みのある場所のことです。
淵は、想像以上に深さがあり(10〜20m)、複雑な流れや渦が発生しています。
- 渦に巻き込まれて深い川底に引きずり込まれて溺死。
- 複雑な流れにより岩のくぼみに体が押し付けられて身動きができなくなり溺死。
など、重大な事故につながる恐れがあります。決して油断せず、ライフジャケット着用を徹底してください。
岐阜県内で実際にあった話(一部加工しています)
『その日、私たちは、淵の端から端へ、往復して泳いで遊んでいました。ライフジャケットは着用していませんでした。ふと後ろを振り返ると、一緒に泳いでいた友人の姿がありません。119番通報し、ダイバーが、川底に沈んでいる友人を発見しました。』
堰堤(えんてい)(堰(せき))
堰堤(えんてい)(堰(せき))とは、川の水を農業用水、工業用水、水道用水等として利用するために、水をせき止め、上流側の水位を上げるための施設です。河川を横断する形で設置されます。頭首工(とうしゅこう)、取水堰(しゅすいぜき)とも呼ばれます。「堰堤とは水位を制御する施設である」と言えます。 (河川管理用通路、堰などの河川管理施設について)
堰堤を下流側から見ると横長の低い滝のように見えます。ひょっとすると、滝のところで水遊びをしたら楽しそうと思う人もいるかもしれません。しかし、滝のようになっている場所には、縦回転の渦(リサーキュレーション(再循環流))が発生しています。
- 縦回転の渦(リサーキュレーション(再循環流))巻き込まれてしまい、脱出できず溺死。
など、重大な事故につながる恐れがあります。
堰堤には決して近づかないでください。ライフジャケットを着用したとしても、堰堤には決して近づかないでください。
橋脚(きょうきゃく)
橋脚(きょうきゃく)とは、橋を中間で支えている構造物のことです。
橋脚付近の川底は、水の力によってえぐれて深くなっており、複雑な流れや渦が発生しています。
- 橋脚付近の深みにはまり、複雑な流れのために浮上できず溺死。
など、重大な事故につながる恐れがあります。
橋脚には決して近づかないでください。ライフジャケットを着用したとしても、橋脚には決して近づかないでください。
岐阜県内で実際にあった話(一部加工しています)
『その日、私たちは、橋脚によじ登っては、川に飛び込んで遊んでいました。ライフジャケットは着用していませんでした。何回目かのとき、飛び込んだ友人がいつまでたっても浮上してきません。119番通報し、ダイバーが、川底に沈んでいる友人を発見しました。』
増水
川は、上流の降雨やダムの放流によって急に増水することがあります。常に水の流れに注意するとともに、天気に注意してください。
また、ダムの放流については、事前に近くにダムがないか確認しておき、現地では看板、サイレンや放送に注意してください。サイレンが鳴ったら川から出てください。
Q3.川はどれくらいの速さで流れているのですか?
A3.川の流速は、平常時でおおよそ秒速0.2mから秒速3m程度です。
川の流速は、場所によりさまざまで、また、常に変化しているのですが、平常時、長良川の鮎之瀬橋付近では、おおよそ秒速0.2mから秒速3m程度です。ちなみに、秒速2mから3m程度の流速の川の中では、水中の岩に指でしがみついても、指がズリズリとずれていくくらいの力を受けます。
川は全体が同じ速度で流れてはいません。ゆっくり流れるところと、激しく流れるところが入り混じっています。特に、流心部と呼ばれる川の中央部は常に流れが相対的に速くなっています。
また、雨が降った後等の増水時には流速が速くなります。大雨の後は分かりやすいですが、上流で雨が降って少しだけ増水し、見た目では平常時とほぼ同じ場合でも、流速は確実に速くなっています。川の流速は常に変化しているのです。
さらに、川は、場所によっては、水面に波が全くなく、水面が鏡のように平らで、ほとんど流れていないように見えるのに、実際は、秒速2mから3mを超えるような流速で流れているところもあります。
川は、静かに、速く流れているのです。おとなしそうに見えても激しく流れているのです。川にはこうした怖さもあることを知ってください。
- 「流れがゆるやかそうだから泳いで向こう岸まで渡ってみよう」と泳ぎ始めて、川の中央付近まで来たところで、流心部の激しい流れに流されて溺死。
など、重大な事故につながる恐れがあります。川は決して泳いで渡ろうとしないでください。
Q4.人の泳ぐ速さはどれくらいですか?
A4.世界レベルの競泳選手が秒速1.8mから秒速2.5m程度で、一般の人は秒速1m程度です。
Q5.どうして川を泳いで渡ろうとすることは危険なのですか?
A5.川の流心部の流速は、一般人の泳力をはるかに超えています。溺死する可能性が高いです。
川の流速が秒速0.2mから秒速3m程度(それ以上の場所もあります)、一般人の泳ぐ速度が秒速1m程度ですので、川を泳いで横断しようとすると、横から水に押されて、斜めに進むことになります。
流心部(川の中央部。水深2m以上で足がつかないところが多いです)に近づくほど流れは速くなっていきますので、川の真ん中あたりにさしかかったあたりから体はどんどん下流に流され、「泳いでも泳いでも岸が近づかない」という現象が起きます。このため、パニックになったり、力尽きたりして、溺れてしまうのです。
川を泳いで渡ろうとする際に、危険なのは川の流速だけではありません。
川の流心部は水が急に冷たくなっていることがあります。体は体温を保とうとするので、水中で体力が急速に奪われていきます。これが力尽きて溺れる原因の1つになります。
また、冷えにより足がつることもあります。水中で足がつると泳げなくなりますので、重大な事故につながります。
また、川の中では、渦が巻いていることがあります。泳いでいる途中で渦に巻き込まれ水底に引き込まれることがあります。これも溺れる原因となります。
さらに、水中には、水の表面に頭が出ていない岩(「隠れ岩」と言います。)があります。流されながら泳ぐ途中で、手足や頭を隠れ岩で強打することがあります。負傷して泳げなくなれば、重大な事故につながります。
「人の泳力より速い川の流れ」「足がつかない深さ」「急に冷たくなる水」「渦」「隠れ岩」、川の横断にはこうした危険がありますので、「自分は泳ぐのが得意だから大丈夫だ」と過信したりせず、川は、絶対に泳いで渡ろうとしないでください。
Q6.川は大きく曲がっているところが危ないと聞きましたが、そうなのですか?
A6.川が大きく曲がっているところは危険です。
川が曲がっていても、水は、自動車のように自分でカーブに沿って曲がることはなく、そのまままっすぐ進んで岸に激突し、いろんな方向に向きが変わり、複雑な流れが生じています。
また、川のカーブのアウトサイドは、水の力によって、水中の岩が深くえぐられたり、砕けたりして、複雑な地形が生じています。
ライフジャケットを着用して上流から流れてきた場合、カーブにさしかかると、体はアウトサイドの岸にそのまままっすぐ近づいていき、水中の岩にぶつかったりします。ライフジャケットを着用していないと、複雑な流れと複雑な地形に巻き込まれて、重大な事故につながります。
人には川の水面しか見えませんが、水面の様子から水中の危険性は全く分かりません。水の流れる方向も分かりません。
川に入るときは、油断することなく、ライフジャケットを必ず着用してください。
Q7.川とは、どのように付き合えばよいですか?
A7.川の危険性を理解し、自分に合った適切なリスク対策を行うことが大切です。川には水難事故リスクがあります。リスク対策としては、回避、低減、移転、保有の4つの方法があります。
リスク回避:川では泳がないと決定する
リスク低減:ライフジャケットを着用する
リスク移転:保険に加入する
リスク保有:リスクを受け入れて泳ぐ
リスク回避
リスク回避策としては、「川では泳がないと決定する」という方法があります。川で泳がなければ、川での水難事故リスクはゼロになります。「川では泳がない」をルールにしているご家庭もあると思います。
リスク低減
リスク低減策としては、「ライフジャケットを着用する」という方法などがあります。ライフジャケット着用により水難事故リスクが低減されることが期待されますが、リスクはゼロにはなりません。
リスク移転
リスク移転策としては、「保険に加入する」という方法があります。
リスク保有
リスク保有とは、リスクを受け入れ可能と判断した場合、あるいは、現実的な対策がないため受け入れると判断した場合のリスク対策です。ライフジャケットを着用しないで川で泳ぐ人は、結果的に「リスク保有」を選択していることになります。
毎年、多くの方が水難事故で亡くなっています。水難事故リスクは決して過小評価してはいけません。自分だけは大丈夫、ということはありえません。また、ライフジャケットは数千円から数万円の価格で販売されていますので、リスク対策は可能です。
水難事故リスク対策として、リスク保有を選択することは全くおすすめしません。
Q8.川と海の違いは何ですか?
A8.川では海ほど体が浮きません。
まず第一に、川は真水で、海は塩水という大きな違いがあります。このため、川では海ほど体が浮かないので注意が必要です。
第二に、川は上流から下流に向かって流れ続けている点が海とは大きく異なります。川では、海と同じように泳ぐことはできません。
川、海にはそれぞれ独自の危険性があります。川は海よりは小さいので、安全であるかのような錯覚に陥ることが、もしかすると、あるのかしれませんが、川も海もそれぞれが危険であり、水難事故リスクがあります。
川と海、それぞれの危険性をあらかじめよく知り、遊びに行くときは十分注意してください。
Q9.海の水難事故の原因の1つである離岸流はどれくらいの速さですか?
A9.離岸流(岸から離れていく流れ)の流速は秒速2m程度です。
水難事故に関するQ&A
海上保安庁第四管区海上保安本部トップページ<外部リンク>
事故が伝えるメッセージ(安全啓発リーフレット掲載)<外部リンク>
岐阜県は海上保安庁第四管区海上保安本部と連携して海・川での水難事故防止を進めています。海でも川でもライフジャケットを必ず着用してください。
Q10.人の泳ぐ速度が秒速1m、川が秒速0.2~3m、離岸流が秒速2mということから、どういうことが言えるでしょうか?
A10.川も海も、人の泳力をはるかに超える流速がありますので、川も海も、人が泳ぐ場所としては、非常に危険な場所であると言えます。
川の流速は、流心部(川の中心部)では平常時でも秒速2m程度はありますが、一方、海の水難事故の原因の1つである離岸流も秒速2m程度です。川(流心部)=離岸流=秒速2m。
つまり、川で泳ぐこと、特に川を泳いで横断することは、自ら危険な離岸流の中に入っていくことと同じです。
海では、離岸流が頻繁に発生する場所は、多くが遊泳禁止区域として周知が図られています。
結論として、次のことが言えます。
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川では泳がない方が安全です。
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海は、監視員やライフセーバーのいる海水浴場を利用した方が安全です。
- 川でも海でも水の中に入る場合は、必ずライフジャケットを着用する。