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森林のはなし
森林のはなし
■森林の機能
森林には様々な機能があります。その機能は単一ではなく、複合して存在します。
その機能をできるだけたくさん引き出すことが、森林に関わる人間の営みの
"豊かさ"や"多様性"を形づくります。
では、森林の持つ機能にはどんなものがあるでしょう。
(1)収穫機能
森林の持つ多種多様な資源価値と、それらを生かす人間の技術が一体となって、この機能が発揮されます。スギやヒノキなど木材の生産がこれにあたります。
(2)保全機能
この機能は、気象への影響、空気の浄化、水源涵養など、人間生活の自然的な基盤のほとんどを支えていると言っても過言ではありません。
a)気象への影響
森林の存在は、気温の差を緩和し、人間にとっての生理的な快適域の形成に役立っています。都市の中の森林(公園や緑地など)では、熱の発散や通気の確保により、心地よい空間が確保され"街のオアシス"となっていることからもわかります。また、光合成により二酸化炭素を吸収し炭素を貯蔵するとともに、酸素を供給しています。我が国の森林の二酸化炭素吸収量は年間9,700万トン、森林の酸素放出量は、年間7,100万トンで、これは、我が国の二酸化炭素排出量の8%、国民の年間呼吸量の2倍に相当します。森林は、地球温暖化をはじめとする気象変動に大きく影響しています。
b)空気浄化機能
森林や樹木群は、空気を浄化する機能を持っています。樹幹や葉は汚れた空気を濾過し、塵埃を吸着させ、降雨とともに林地に落として地面に固定します。マツ林で30〜50t/ha、コナラやブナ林で70t/haの塵埃を処理する能力があると言われています。
c)騒音防止機能
密度の高い森林は、音波の拡散と伝達を妨げることにより、騒音を防止する機能を持っている。ブロックなどの塀は音を遮断するだけですが、森林や樹林地は音を吸収し、樹林地内で弱めてしまう効果を発揮します。
d)水源涵養機能(水収支・水浄化・水供給)
この機能は、森林が果たす水調節、清浄な水の供給、水供給量の増加という作用は関連し機能し、継続的な水供給に大きな役割を果たしています。これは、森林の持つ貯水能力が水の流出時間を調整し、土砂流出や洪水を防止したり、乾燥期における水不足を緩和する働きによりもたらされています。また、森林土壌は、水を浄化する作用を持っています。安定した流量の確保、清浄で適度の有機物を含んだ水の供給は、河川区域だけでなく海に至るまで、魚などの水棲生物相の豊かさの保全にもなくてはならないものです。美しく豊かな海もまた、森林の恵みによりもたらされた賜です。
e)防災機能(土壌維持、地力保持)
森林の樹木が根を張り巡らすことによって土砂の崩壊を防いだり、森林の下草植生や落葉落枝が地表の侵食を抑制する効果があり、自然災害の防止に役立っています。この機能は、人間の生活環境の維持だけでなく、農業などの生産環境の維持にも役立っています。
f)野生鳥獣保護機能
豊かな森林には、野生鳥獣の生息,繁殖,採食および休息などのいわゆる生活の場があります。その豊かな森林を維持していくことが、野生の生き物を守る事になるのです。
(3)休養機能
森林の中で遊び、生き物たちを観察し、心身を休める休養活動(セラピー)が近年注目されています。森林の中では、人の脳波の出方が異なったり、脈拍の安定が見られたり、精神状態の平静化がもたらされる保健機能が実証されています。樹木が放散するテルペン類の化学物質、森林の中の大気中のイオン分布、光の波長、快適域に属する温度や湿度など、物理的、化学的及び生物的な多くの作用が合成しあって、森林の健康休養機能機能が形成されているわけです。