本文
検討結果(利用者負担)
6.利用者負担
(1)利用者負担の必要性
環境保全施策を実施するための財源としては、原因者負担の観点から利用者に負担を求めることが環境保全意識を高めるうえからも適当と考えられる。
乗鞍スカイライン検討委員会報告(平成13年2月26日)
マイカー規制、山頂周辺の自然保護活動、環境美化活動等の活動に要する経費は、利用者にもその負担を求めるべきである。
乗鞍スカイライン運用検討協議会意見(平成14年5月13日)
乗鞍岳の貴重な自然環境を適正に保全し、利用者に自然環境保護意識を高めてもらうため、ネイチャーガイドの配置、美化清掃、自然環境調査等の環境保全施策を実施する。この財源として、環境保全税等の法定外目的税の導入を検討する。
(2)利用者負担を求める方法
1.方法
利用者負担を求める方法としては、租税、分担金(負担金)、使用料、手数料などが考えられるが、環境保全施策を実施するための財源を得る手法としては、環境保全事業を実施することによる受益者が広範囲にわたり個別に受益を評価し難いことなどから租税によることが適当と考えられる。
- 租税とは、国家(地方公共団体)が特別の給付に対する反対給付としてではなく、公共サービスを提供するための資金を提供する目的で、法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付である、と定義される(金子宏「租税法」)。
つまり、租税は、一方的・権力的課徴金の性質をもち(租税の権力性)、特別の給付に対する反対給付の性質をもたず(租税の非対価性)、住民の能力に応じて一般的に課されるという性質をもち、金銭給付であることが原則とされる。 - 一方、分担金は、特に利益を受ける者からその受益の限度において徴収する金銭であり、使用料とは、行政財産の目的外使用又は公の施設の利用の反対給付として徴収する金銭である。また、手数料とは、特定の者のために提供する公の役務に対し、その費用を償うため又は報償として徴収する金銭である。
- したがって、創設しようとする法定外税が受益者負担金的な性格を持つものであったとしても、財政需要とされる様々な事業において、納税義務者等のみが利益を受けるというわけではなく、納税義務者以外の不特定多数の者が利用するというものについては、特定の者から徴収する形態としては、税方式が望ましいことになる。
「新税導入・税率見直しに関する30問30答」(地方税窓口事例研究会)より
「税」平成12年7月号(ぎょうせい)より
2.協力金方式との比較
これまで自然環境の分野においては利用者に負担を求める方法として強制力のない協力金方式がとられている例が多いが、今回の場合においては、県が事業を継続的に実施するためには安定した収入を得ることが必要であることなどから、協力金方式ではなく税方式によることが適当と考えられる。
方式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
税方式 |
|
状況の変化に柔軟に対応できない。(条例制定、総務省同意等が必要) |
協力金方式 | 状況の変化に応じて柔軟な対応が可能である。 |
|
(3)法定外目的税
平成12年4月に施行された地方分権一括法により、都道府県又は市町村は、条例で定める特定の費用に充てるため、法定外目的税を課することが可能となった。
法定外目的税は、地方団体の課税自主権を拡充し、また、受益と負担の関係を明確化する観点から創設されたものであり、その新設にあたっては、総務大臣に協議し、その同意を得ることが必要とされている。この制度を活用して乗鞍地域への入り込み客に負担を課し、その税収を環境保全施策の費用に充てることが考えられる。
◇法定外目的税制度の概要
道府県又は市町村は、条例で定める特定の費用に充てるため、法定外目的税を課することができるものとし、その新設又は変更にあたっては、総務大臣に協議し、その同意を得なければならない。(地方税法第731条)
総務大臣は、法定外目的税の新設又は変更に係る協議の申し出を受けた場合には一定の事由があると認める場合を除き、これに同意しなければならない。(地方税法第733条)
<一定の事由>
- 他の国税・地方税と課税標準が同じであり、かつ、住民負担が著しく過重となるとき
- 地方団体間の物の流通に重大な障害を与えるとき
- 国の経済施策に照らして適当でないとき