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大山自治会(東京都立川市)
活動団体名
立川市大山自治会
活動地域
大山団地(都営住宅)地域
活動場所
大山自治会事務所(立川市上砂町1丁目13-1)
立川市の概要
立川市は、東京都のほぼ中央の西よりに位置する、多摩地域の中核都市である。
戦後、米軍基地の町として歩んできたが、基地が返還された現在、跡地には様々な国の機関が集積し、跡地周辺には多くの住宅が立ち並ぶベッドタウンとなっている。
人口184,274人、92,251世帯(令和元年8月1日現在)
大山団地、大山自治会の概要
都営上砂町1丁目アパート(通称大山団地)は、市北部に位置する都営住宅で、昭和38年に入居が開始された。
その後、老朽化による建て替えが行われた結果、新たな入居者が全体の半分程度となり、入居者年齢もかなり若返った。
現在は、29棟に約1,600世帯、約4,000人が入居している。
65歳以上の高齢者は約1,000人(うち、ひとり暮らし約400人)、敷地内に高齢者専用住宅が3棟ある。
大山自治会は、大山団地の自治組織で、加入率100%を誇る自治会である。
「ゆりかごから墓場まで」の理念のもと、最後まで安全・安心に暮らせるまちづくりをめざしている。
自治会の組織は、会長、副会長、会計、監査、三役、区長、専門部長(体育部、文化部、交通安全対策部、防災・防犯部、生活環境部)等合計44名で構成されている。
主な活動等
1 高齢者対策
(1)高齢者の見守り活動
- 孤独死をゼロにするため、高齢者宅の両隣による見守り活動、企業(電気・ガス・水道・新聞)との連携や、大山MSC(ママさんサポートセンター※)による高齢者見守りネットワーク等により、異常時の自治会への連絡体制を確立している。
※ママさんサポートセンター「大山MSC」
一時保育、子育て相談、高齢者見守り等の活動を無償で行う地域のボランティア団体(看護師、保育士の有資格会員多数)
(2)自治会葬の実施
- 住民から葬儀費用の借入に関する相談を受けたことをきっかけに、自治会による葬儀を開始した。
- 市から祭壇(32,000円)を借り、団地内の集会所を利用し、自治会で葬儀を執り行っている。
- 葬儀だけにととまらず、その後の年金等諸手続きの書類作成支援も行っている。
- この取り組みに惹かれ、大山団地への入居を希望する高齢者も多い。
(3)高齢者名簿作成
- 65歳以上の高齢者名簿に親族等の連絡先を登録し、民生委員と連携し、いざという時の親族への連絡体制を確立してる。
2 名簿登録義務化
- 非常時の備えや全世帯(家族全員)傷害保険加入のため、全住民の名簿を作成している。
- 名簿は、全体の他、高齢者だけ、子供だけの名簿もある。
- 名簿作成の趣旨と必要性を説明し、住民の理解を得ている。
3 ボランティアチームの編成
- 駐車場・公園の管理、着付け、運動会や夏祭りの協力等、10の活動に、現在約500人が登録している。
- 平均年齢は50代、60代や70代の登録も多く、各自が自分のできる範囲で活動を行っている。
- 活動に参加することにより、人間関係が広がり、地域のために役立っているという意識づけもできる。
- 登録した会員等の人材リストにより、自治会活動やイベントの開催、困りごとの解決時に、住民の眠っている能力や資格を生かしている。(例)電気工事、着付け、外国語通訳、大工仕事等
活動の特徴
1 「市・能・工・商」を土台とした活動
市・・・住民主体の自治会
能・・・能力・技術者の人材バンク
工・・・工夫・アイディアで企画運営
商・・・コミュニティビジネスで有効活用
- 住民自らアイデアを出し合い、適材適所の人材や工夫により、住民が参加したいと思う魅力的な行事・イベントを行う。
- 活動資金獲得のため、公園や駐車場管理受託等の収入源を積極的に見つけ、収入を確保している。
2 専従職員の配置
- 自治会予算による専従職員を自治会事務所に配置している。
- 団地内の相談窓口を一本化し、相談しやすい体制が構築されるとともに、自治会事務を専従職員が担うことにより役員の業務負担が軽減されている。
3 補助金に頼らない運営
- 自治会運営を企業運営と同じと考え、補助金に頼らなくてもやりたい活動ができるよう、収入源を積極的に開拓している。
(例)団地内の公園や駐車場管理事業の受託
4 自治会活動の見える化
- 大山自治会だより(年16回発行。行事案内、自治会活動の報告等)や、個別行事案内等、活動の状況を積極的に情報提供し、住民に自治会の活動を知ってもらうことを心掛けている。
5 魅力ある自治会づくり
- いかに魅力ある自治会にするかを常に考え、住民のちょっとした「こんな事が出来たらいいね」という言葉を見逃さず、どうすればそれが実現できるか検討し、実現に向けて取り組んでいく。(例)夏祭りで浴衣が着たい人のための着付けボランティア
6 人材の育成
- 様々な企画を実現させるためには、いい人材の発掘と育成が重要と考えている。
- 若者の意見も、頭から否定せず、やらせてみて、やる気、自信をつけさせている。
- ジュニア(小中高生)時代から、企画・運営のできる人材を養成するため、ジュニアリーダー養成講座を開催している。
7 すべての住民に役割分担
- 障がい者や高齢者であっても、自治会の一員として、周りのサポートを受けながら、ゴミ出し当番等の役割を担っている。
自治会加入率について
- 大山自治会が加入率100%を維持する要因は、佐藤良子前自治会長(現相談役)を中心とした長年の地道な努力、工夫の成果といえる。
- 例えば、入居時には歓迎会を開催し、規則、自治会の活動等を丁寧に説明を行う。また、外国人入居者に対しても、外国語が堪能な自治会会員(ボランティア)が通訳となり丁寧な説明を行い、自治会活動への理解に努めている。
- また、常に自治会活動の見える化を意識し、広報紙等様々な方法で、自治会の活動内容を積極的に住民に情報提供することにより、自治会活動を広く周知し、住民が活動に興味を持ってもらうよう努めている。
- このような様々な工夫により、魅力ある自治会が形成され、一般的に加入率の低い若い世代も含めた、全世帯100%加入率が持続されている。
大山自治会の様子
大山自治会事務所
事務所の様子(右が佐藤相談役)
団地の様子
自治会広報紙
団地の案内図
整然としたゴミ置場
取材を終えて
- 大山自治会活動の基盤は、佐藤良子前自治会長(現相談役)を中心とした、長年に渡る地道な活動の中で構築されてきた。
- 「人が人にやさしいまち」「ゆりかごから墓場まで」を理念とし、住民に必要とされる自治会づくりのため、創意工夫を重ねた結果が現在の大山自治会の姿である。
- 「魅力ある自治会でなれければ、みんな入ってくれない」「自分の町にあうもの、必要なものは何かを考え、地域に合ったものを自分たちで作る。」「人がつながるまちは魅力的」「自治会活動は、企業運営と同じ。待っていてはだめ、補助金等に頼らず、自分たちから働きかけて活動資金を作ればいい」等々、自治会活動に対する熱い思いがひしひしと伝わる言葉をたくさんいただいた。
- すべての自治会に、佐藤さんのようなリーダーは存在しないかもしれないが、佐藤さんのこれらの言葉の中には、自治会活動を行う上でのヒントがたくさんあるのではないかと感じた。