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川の学校 コウタ君と一緒に、川について学ぼう

記事ID:0166355 2021年7月20日更新 河川課 印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示

 お父さんとコウタ君は、長良川に遊びに来ました。

 お父さんは、黄色のライフジャケットを差し出しながら「コウタ君、川で遊ぶときはライフジャケットを着るんだよ」と言いました。

 コウタ君は「早く川で遊ぼうよ」と言って、ひとりで川に向かって走っていきました。

 すると、道を曲がった途中の草むらに小道がありました。カエルたちが跳びながら小道に入っていきます。なんだろう、と思って、コウタ君も小道に入ってみました。

 

 ふと気づくと、コウタ君は、見知らぬ学校の前に立っていました。

 中からカッパの姿をした先生が出てきて、「コウタ君の教室はこちらですよ」と言って、コウタ君を教室に案内しました。

 教室には仲間がいました。

「ぼくはヒキエル。よろしく」

「わたしはアオエル。よろしくね」

「おいらはガマエル。よろしくな」

 なんだかみんな変わった名前だな、とコウタ君は思いましたが、「ぼくはコウタ。よろしく」と言いました。

 

 黒板の横に時間割が書いてありました。

 1時間目 川ってなんだろう

 2時間目 川に設置されている人工構造物について

 3時間目 川遊びのリスク対策

 4時間目 卒業試験

 

 カッパの姿をした先生が「はい、皆さん座ってください。授業を始めます。私は、みずのかっぱと言います。よろしくお願いします」と言いました。

 

1時間目 川ってなんだろう

かっぱ先生:1時間目は川について学びましょう。川は一見おだやかで、冷たくて、暑い季節は川遊びしたくなりますよね。ところで、川ってなんだと思う?

ヒキエル:天然のプール!

ガマエル:おいらたちが夏に遊ぶための場所!

アオエル:地上に降った雨が海に注ぐ流れのことじゃないかな。

かっぱ先生:コウタ君はどう思う?

コウタ君:うーん。ぼくも泳いで遊ぶための場所だと思っていたけど、アオエルさんの意見を聞いて、本当にぼくたちが遊ぶための場所なのかなって、、、

かっぱ先生:そうね。地球では、降った雨が川に集まって海に流れ、海水は太陽のエネルギーで蒸発して雲になって、地上に雨を降らせるということが自然に繰り返されています。地球全体で水が循環しています。川はその循環の一部です。つまり、川は自然の一部です。

ヒキエル:川は自然の一部として重要な役割を果たしているんだね。

ガマエル:川は人間が遊ぶための「流れるプール」じゃないんだ。

かっぱ先生:川は川。川は自然の一部であって、プールのように、人間が泳ぎやすいようにできてはいません。

コウタ君:でも、川で遊びたいな。

かっぱ先生:自然そのものの川で遊ぶには、まず、川のことをよく知ることが大切です。実は、川にはいろんな危険が潜んでいます。ひとつひとつ見ていきましょう。

 

川の怖さその1 川は急に深くなる

 川の深さは、歩けるくらいの浅さから、急に、足がつかない深さに変わります。川の中を歩いていて、急に深くなっているところにはまってしまい、溺れることがあります。

➡ 川の深いところに行ってはいけません。川の中を歩くときは、急に深くなっているところにはまらないよう、足元に十分注意しなければいけません。

 

川の怖さその2 川は急に流れが速くなる

 川の流れは、川岸の方は緩いところでも、流れの中心部(流心部)では、急激に速くなっています。

 川を泳いで横断しようとして、途中で流されてしまい、溺れることがあります。

➡ 川は、絶対に泳いで横断しようとしてはいけません。

 

川の怖さその3 川の水はとても冷たい

 川の水は、地下水が含まれており、また、常に流れているため、真夏でも冷たいです。川で泳いでいると、水の冷たさに体力を奪われ、力尽きて、川の流れに流されてしまい、溺れることがあります。また、水の冷たさなどにより、泳いでいる途中で、足のふくらはぎが筋痙攣を起こすことがありますが(こむらかえり)、そのとき、足がつかない深さのところにいると溺れることがあります。

➡ 川では泳がない方が安全です。また、川の深いところに行ってはいけません。

かっぱ先生:川を泳いで横断しようとすると、深さ、急な流れ、水の冷たさ、といった川の危険性すべてに直面することになります。川は、絶対に泳いで横断しようとしてはいけません。川では、泳がない方が安全です。

 

川の怖さその4 川の流れは複雑

 川の流れは複雑で、常に、渦や下に引き込む流れが生じています。川では、そうした複雑な流れに巻き込まれて溺れることがあります。岩や橋から飛び込むと、岩や橋の近くの複雑な流れに巻き込まれて浮上できなくなり溺れることがあります。

➡ 川では泳がない方が安全です。また、岩や橋から川に飛び込んではいけません。

 

川の怖さその5 川底の岩や流木

 川底には、岩や流木があります。また、水の表面に頭が出ていない大きな岩(「隠れ岩」といいます。)もあります。川では、それらに手足が引っかかったり、挟まったりし、水の上に顔を出せなくなってしまい、溺れることがあります。また、岩や橋から飛び込んだ時に、隠れ岩などに頭や体をぶつけて骨が折れたり、脱臼したりして動けなくなって溺れることがあります。脊髄を損傷すると、損傷部位によっては四肢が麻痺したり、呼吸が止まってしまいます。

➡ 川の深いところに行ってはいけません。また、岩や橋から川に飛び込んではいけません。

かっぱ先生:岩などから川に飛び込むと、仮に、水中に複雑な流れや隠れ岩などが一切なかったとしても、深く水中に潜りすぎてしまい、浮上するまで息が持たず、溺れることがあります。実際に、岩や橋から川に飛び込んで遊んでいて、何回目かのときに浮上できず溺れて亡くなるという事故がたくさん起きています。誰かが飛び込んで無事だったから自分も大丈夫とは限らないし、自分が1回飛び込んで無事だったから2回目も大丈夫だとは限らないのです。絶対に、岩や橋から川に飛び込んではいけません。

 

川の怖さその6 えん堤(えんてい)などの人工構造物

 川には、いろいろな人工構造物が設置されていますが、それらに挟まったり、吸い込まれたり、巻き込まれたりして溺れることがあります。人工構造物については、詳しくは2時間目に説明します。

➡ 川の人工構造物には絶対に近づいてはいけません。

 

ヒキエル:川は急に深くなっているから危ないんだね。

アオエル:川の速い流れに流されてしまわないよう気をつけなきゃね。

ガマエル:川への飛び込みはとても危険なんだね。

コウタ君:でも、川はどれくらいの深さまでなら入っても安全なんだろう?

かっぱ先生:川では、100%安全といえる深さはありません。足が流木などにひっかかって川の中にうつぶせに転んだ場合でも、手をついて水中から顔を出して呼吸を確保できる深さが限度と言えるでしょう。それはだいたい膝より下の深さです。でも、膝より下の深さでも流れが強ければ流されてしまうことがありますし、転んで頭を打ったりケガをしたりすれば、手をついて水中から顔を出すことができなくなってしまうこともあります。川は浅いところでも溺れることがあるので注意が必要です。

 

 川は自然そのもの。人間が泳いで遊ぶために作られたものではありません。川はプールではありません。

 川では、安全は一切保証されていないのです。

コウタ君:より安全に遊ぶにはどうすればいいの?

かっぱ先生:川で遊ぶときは、どんなに浅いところでもライフジャケットを必ず着用すること、これが最も大切です。

 

2時間目 川に設置されている人工構造物について

かっぱ先生:2時間目は川に設置されている人工構造物について学びましょう。川には、人の手によってつくられた人工構造物がいろいろあります。どんなものがあり、どんな危険があるのか、学んでいきましょう。

 

えん堤(えんてい)(ローヘッドダム)

 川の水を水路に分岐させて、農業用水などとして利用するために、水の流れを少しせき止める(「せき上げる」と言います。)ための小さなダム(頭の低いダム)が川を横断する形で設置されていることがあります。このような人工構造物のことを「えん堤(えんてい)」(ローヘッドダム)と言います。

 えん堤は、下流側から見ると横長の低い滝のように見えます。

 この滝のところには、縦渦(循環流。リサーキュレーション)が生じていて、その渦に人間が巻き込まれると脱出はまず不可能で、溺死事故に直結します。

➡ えん堤には、絶対に近づいてはいけません。縦渦に巻き込まれた場合、溺死事故に直結します。

 

落差工(らくさこう) ※床止め(とこどめ)の1種

 川底が、コンクリートや石畳みによって階段状に作られていることがあります。このような人工構造物のことを「落差工(らくさこう)」と言います。これは、川底を階段状にすることによって洪水の流れのエネルギーを一箇所に集中させその場所でエネルギーを減らすなどの目的で設置されています。えん堤と同じく、下流側に縦渦が生じていて非常に危険です。

➡ 落差工には、絶対に近づいてはいけません。縦渦に巻き込まれた場合、溺死事故に直結します。

 

橋脚(きょうきゃく)

 川の中で橋を支えているコンクリート製等の人工構造物を橋脚といいます。橋脚の周りは水の力で川底がえぐられて(「洗堀(せんくつ)」と言います。)、すごく深くなっていて、そこでは複雑な流れが生じています。そこに入り込むと浮上できずに溺れることがあります。

➡ 橋脚の周りには、絶対に近づいてはいけません。特に、橋脚によじ登って川に飛び込む行為は、溺死事故に直結しますので、絶対にしてはいけません。

 

水制(すいせい) ※消波ブロック(しょうはぶろっく)など

 堤防や河岸が水の力でえぐられることを防ぐために、水の流れる方向を変えたり、水の勢いを緩くしたりする目的で、河岸や、川の中に、コンクリートブロックなどが設置されています。これらのことを「水制(すいせい)」と言います。

 河岸などに消波ブロック(しょうはぶろっく)が並べてあることがあります。水制の一種です。消波ブロックの上を歩いていて足が滑って隙間に足が挟まったり、隙間に吸い込まれたりして溺れることがあります。

➡ 水制には、絶対に近づいてはいけません。

 

護岸(ごがん)

 堤防や河岸を水の力から守るために、堤防や河岸がコンクリートや石で覆われていることがあります。このような人工構造物のことを「護岸(ごがん)」と言います。護岸は、水中に土台(基礎)がありますが、その土台の下が水の力でえぐられていることがあります(「侵食(しんしょく)」といいます。)。そのすき間に入り込んでしまったり、足が挟まったりして溺れることがあります。

➡ 護岸には、絶対に近づいてはいけません。

 

根固め工(ねがためこう)

 護岸の土台(基礎)の下の侵食を防ぐために、護岸沿いに、川底にコンクリートブロックや大きな石が並べてあることがあります。このような人工構造物のことを「根固め工(ねがためこう)」と言います。隙間に足が挟まったり、隙間に吸い込まれたりして溺れることがあります。

➡ 根固め工には、絶対に近づいてはいけません。

 

床止め(とこどめ)

 川底が水の力でえぐられてしまわないよう、川底を守るために、川底を部分的にコンクリートや石で覆うことがあります。このような人工構造物のことを「床止め(とこどめ)」と言います。落差のある床止めを落差工(らくさこう)、落差の少ない床止めを帯工(おびこう)と言います。水の力で破損したり、えぐられたりしてできた隙間に足が挟まるなどして、溺れることがあります。

➡ 床止めには、絶対に近づいてはいけません。

 

樋管・樋門・水門

 大きな川(本川)と小さな川・水路(支川)が合流するところで、支川の出口に設置される、洪水時の逆流を防ぐための施設です。蓋の役割を果たします。施設に挟まったり、複雑な流れに巻き込まれたりして溺れることがあります。

➡ 樋管・樋門・水門には、絶対に近づいてはいけません。

 

排水機場

 洪水時に本川から支川への逆流を防ぐために樋管・樋門・水門を閉鎖した場合に、支川が溢れてしまわないようポンプで支川の水を本川に排出するための施設です。施設の中には、水槽やポンプ施設など、近寄ると危険な施設があります。

➡ 排水機場には、絶対に近づいてはいけません。

コウタ君:川には、様々な人工構造物が設置されているんですね。全然知りませんでした。

かっぱ先生:自然そのものの川に、人間が、暮らしを守るために、いろいろな施設を設置しているんです。こうした人工構造物は、人間が遊び場として使用することを想定して設計されていませんし、常に、強力な水の流れにさらされているので、洗堀や侵食、損傷は避けられません。このため、人工構造物やその付近は、人間にとって、非常に危険なのです。川の人工構造物には絶対に近づいてはいけません。

コウタ君:川は非常に危険な場所だということはよく分かりました。でもやっぱり川で遊びたいな。

かっぱ先生:どうすればいいのか、3時間目に考えてみましょう。

 

3時間目 川遊びのリスク対策

かっぱ先生:3時間目は川遊びのリスク対策について考えてみましょう。

コウタ君:リスク対策?

かっぱ先生:リスクとは、起きるかもしれないし起きないかもしれない危険のことです。

 川遊びには、溺死するリスクがあります。リスク対策には「リスク回避」、「リスク低減」、「リスク移転」、「リスク保有」の4つの種類があります。なお「リスク移転」は保険に入ることなどで、「リスク保有」はリスクをそのまま受け入れることです。

 

川遊びの「リスク回避」対策

 川遊びの「リスク回避」対策は、「川では遊ばない」ということです。こうすれば確実に川遊びで溺死することはありません。川遊びでの溺死リスクはゼロになります。

 

川遊びの「リスク低減」対策

 川遊びの「リスク低減」対策はいろいろあります。

 リスク低減対策を行っても、リスクはゼロにはなりませんが、リスクを減らすことはできます。

 川遊びで溺死しないためには、できる限りのリスク低減対策を行うことが大切です。

 

ライフジャケットを着用する

 呼吸を確保することが重要なので、ライフジャケットの着用は最も重要なリスク低減対策となります。ライフジャケットの色は、流されたときに発見されやすいように、黄色などの明るい色が良いです。

 

滑りにくい靴を履く

 河岸や岩場で足を滑らせて川に転落しないために、また、水中で足を滑らせて深みにはまらないようにするために、滑りにくい靴を履くことが有効です。

 なお、脱げたサンダルが川に流され、それを追いかけて水難事故に遭うことがあります。川に流されたサンダルや帽子、ボールなどは追いかけてはいけません。

 

川の深いところに行かない。川を泳いで横断しない。岩や橋から飛び込まない。人工構造物に近づかない。

 危険な行為を避けることで、リスクを減らすことができます。

 

川では子どもだけで遊ばないで保護者の方と一緒に遊ぶ。保護者の方は子どもから離れないで、常に子どもに手の届く距離にいる。

 川遊びには、溺死リスクだけでなく、誘拐や性犯罪のリスクもあります。子どもは保護者の方と一緒に遊ぶことが大切です。

 保護者の方は、「子どもから目を離さない」だけではなく、いつでも子どもを手でつかめる距離で「子どもから離れない」ことが大切です。 

 

天候や水位、ダムの放流に注意する

 遊んでいる場所が晴れていても、川の上流で雨が降れば水かさが増してきます。また、川の上流のダムが放流を行えば水かさが増してきます。常に天候や水位、ダムに注意を払い、いつでも川の外に出るつもりでいることが大切です。

 

コウタ君:川ではライフジャケットを着用することが最も大切なんですね。

ガマエル:大事なのは、「自分を知ること」じゃないかな。コウタ君は人間で、ぼくたちみたいなカエルじゃない。コウタ君には、人間としての自分の限界を知って、ライフジャケットを着用して、浅いところで、安全に川を楽しんでほしいな。

コウタ君:え、君たちは人間じゃないの。

かっぱ先生:カッパはカッパ。カエルはカエル。人間は人間。それぞれが、川とのよいつきあい方を見つけていけるといいですね。

ヒキエル、アオエル、ガマエル、コウタ君:はい。かっぱ先生。

 

4時間目 卒業試験

かっぱ先生:ではこれから卒業試験を行います。コウタ君、これから川で遊ぶときにはどうしますか?

コウタ君:黄色などのよく目立つライフジャケットを着て、浅いところで、流れの速さにも十分注意して、保護者の人と一緒に遊びます。川への飛び込みや川の横断はしません。えん堤などの人工構造物には絶対に近づきません。

かっぱ先生:よし、コウタ君、合格です。

ヒキエル、アオエル、ガマエル:よかったね、コウタ君!

 

 黄色いライフジャケット、、、コウタ君は、急にふと、お父さんのことを思い出しました。あれ、ぼくは一体、、、

 

 

「おい、コウタ、しっかりしろ」とお父さんの声が聞こえてきました。

 コウタ君が目を開けると、心配そうな顔をしたお父さんがそばにいました。

「ああ、よかった。草むらからカエルの声がするので見てみたら、そこにコウタ君が寝ていたんだ。コウタ君の近くで3匹のカエルが大きな声で鳴いていたよ」とお父さんは言いました。

「お父さん、ぼく、川で遊ぶときはライフジャケットを着て、浅いところで気をつけて遊ぶようにする」とコウタ君は言いました。